ヴィンテージ・リイシューという概念が現在ほど確立されていなかった1980年代初頭、アメリカ・ニュージャージー州Red Bankに存在した名店Guitar Trader。特に有名なのが、Gibsonへ1959 Les Paul Standardの徹底した再現を要求して製作された通称“Guitar Trader Les Paul”で、厳選された木材や細かなパーツ仕様、フィニッシュに至るまで妥協を許さないその姿勢から、現在ではヴィンテージ・リイシュー史に名を残す存在となっています。そのGuitar Traderでリペア/製作に携わった中心人物の一人がMichael Dresdner。後にはC.F. Martinでのキャリアを経て、Tacoma Guitarsの立ち上げにも深く関わるなど、ギター製作・木工・フィニッシュのスペシャリストとして知られる人物です。
今回ご紹介させて頂きますのは、そのMichael Dresdnerに深く関連するGuitar Trader Historical SeriesのStratocaster。1990年代に国内バイヤーによって企画され、Dresdnerのストック材を元にネック/ボディを製作し、最終的な組み込みを国内ビルダーが手掛けた非常にマニアックなシリーズです。同様のDresdner関連Stratocasterについても、当時国内楽器店からネック/ボディ製作を依頼し、日本国内で組み上げられた個体の存在が確認されており、まさに日米のクラフトマンシップが交差した時代ならではの一本と言えるでしょう。 中でも今回入荷した個体は、造りの良さでも評価の高い1st Lotにあたり、この初期ロットにのみ採用されたレアカラーを纏った非常に希少な一本です。
こちらのスペックにつきましては、ボディにはアッシュ、ネックには板目取りのメイプル、指板には色濃いローズウッドをスラブ貼りにて採用した、ヴィンテージSTらしい王道の木材マテリアル。ロングスケール、ナット幅42mm、指板Rはヴィンテージスペックよりも緩やかな9.5Rを採用し、ネックグリップには手の平へ自然に収まる握りやすいUシェイプを採用しています。トラディショナルな62STのフィーリングを基調としながら、コードワークからチョーキングを多用するリードプレイまで扱いやすい、非常に実戦的な仕上がりとなっています。
そして本機の大きな魅力となるのが、その徹底したヴィンテージライクな作り込みです。フィニッシュは下地から丁寧に仕上げられたオールラッカー仕様。ピックガードにはMontreux製セルロイドピックガード、トレモロ周りにはRaw Vintage Pure Steel SaddlesおよびTremolo Springsを採用し、トレモロブロックについても硬度の高い個体をセレクト。単に見た目をヴィンテージへ寄せただけではなく、弦振動を受け止めるハードウェアからサウンドレスポンスまでを含め、一本の楽器として徹底的に追い込まれています。
サウンドの要となるピックアップには、Fender Custom Shop Custom Fat '50s Stratocaster Pickup Setを搭載。50年代ストラトキャスターらしい煌びやかさや歯切れの良さを基調としながら、ヴィンテージタイプとしては一段太く、芯のあるアウトプットを備えた人気の高いセットです。本機では木部の反応の良さとも非常に上手く噛み合っており、ピックを当てた瞬間にスッと音が立ち上がる俊敏なレスポンスが印象的です。クリーンでは一音一音の輪郭が明瞭で、プレーン弦には艶や鈴鳴り感、巻き弦には芯の太さと適度な弾力を感じさせます。特にハーフトーンでは、空気を含んだような立体感と絶妙な枯れ感が素晴らしく、ヴィンテージSTらしい“カラン”としたニュアンスを存分に楽しめます。ドライブ時にも中域の芯を失わず、ピッキングの強弱へ素直に追従。ヴィンテージライクな煌びやかさと枯れ感、それでいて実戦で埋もれない太さと押し出しを兼ね備えた、まさに“いいストラトの音”と呼びたくなる極上のサウンドです。
また、この素晴らしいレスポンスを支えているのが徹底した内部パーツのチョイスです。ポットにはCTSを採用し、ポットデイトは“9523”となる1995年製品を確認。配線材には希少な50年代ヴィンテージワイヤー、コンデンサにも60年代のNOS品を使用するなど、目に見えない内部に至るまで抜かりのない内容です。ピックアップだけを豪華にした所謂パーツ頼みのMODとは異なり、木部、ハードウェア、電装系の全てが同じ方向を向いているからこそ、この反応速度と生々しい出音が生み出されているのでしょう。正直、ブランドネームだけでは語れない“極上ストラト”です。
こちらの状態ですが、経年・使用に伴う打痕やスレ、塗装焼け等が確認できます。オールラッカーならではの経年変化も相まって、新品には決して出すことのできないヴィンテージライクな風格を纏ったルックスとなっています。またプレイヤビリティを維持するためリナット、リフレットが施されており、こちらについてはさいたま市のOrange Countyにて折戸氏によって施工されたものとなります。ヘッド裏にはOrange Countyのステッカーも確認できます。ネックコンディションも良好で、トラスロッドにつきましても余裕があることを確認済み。フレット残りは約8割程となっており、今後もまだまだ長くお使い頂けるコンディションです。付属品はトレモロアーム、ブラックトーレックス・ハードケースとなります。
その完成度の高さから当時より非常に高い評価を受けていたGuitar Trader Historical Series。中でも本機は、初期ロットならではのレアカラーに、Michael Dresdnerのストック材、徹底したヴィンテージスタイルのパーツチョイス、さらに実戦的なFender製ピックアップやRaw Vintageパーツを組み合わせた、まさに“弾くためのヴィンテージスタイルST”と呼ぶに相応しい一本です。
Fenderというブランドネームに拘るのではなく、純粋に「とにかく反応が速くて、いい音のストラトが欲しい」という方には是非一度鳴らして頂きたい逸品です。90年代の国産ハイエンドギターならではの丁寧な組み込みと、Michael Dresdnerというヴィンテージギター史に名を残す人物のエッセンスを同時に味わえる、非常にマニアックかつ実戦的な一本。市場でも滅多にお目に掛かることのないモデルとなりますので、お気になりました方は是非この機会をお見逃しなく。
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