2005年の正月に完成した 435 です。時期的に同年の NAMM モデルと思われます。ただシリアルを見ると半年前には作られていたようで、ショーに向けて取っておいた可能性が高いです。マッチング・ヘッドの美しいフレットレス・ベースです。
それまでの mtd は食わず嫌いな人が多くて、その理由の多くは bartolini のPU でした。bartolini は良くも悪くもブランド・イメージが確立されていて、それらは「やや大人しめ」「スムーズ」なPU に、 「TCT系のドンシャリでアクティブ臭い」プリアンプ、といったものでした。ところが実際の mtd はむしろ逆で、非常にワイドレンジなPU と、広大なヘッド・ルームで且つセンター・クリックで完全にフラットなプリアンプを搭載されていました。これは、徹底的に転送ロスを嫌ったトバイアスの設計思想によるもので、中途半端にパッシブ領域を残し切替えて使えるような妥協を一切用意していない、フルにアクティブに振り切ったのが特徴です。結果楽器は、一般的なエレキベースよりも高音も低音も伸び「キレッキレ」に聴こえる訳ですが、ロスのない事により圧倒的に増えた情報量は、木材のニュアンスをより余すとこなく伝える、とも言える訳です。トバイアスの目指したところはそこでした。しかも mtd のPU は「リバースP」レイアウトで、位相干渉のあるデュアル・コイルではありません。見た目ハムバッキングに見える bartolini のソープバーの基本イメージと真逆のサウンドなのでした。それに加えて後にも先にも例のない正負電源を006P電池で行うといった、やや無謀な電源回路のプリアンプは「絶対にクリップしない」「波形が鈍らない」性能を確保しています。この電装系は、bartolini だけでなく他社を含めて見ても、最も尖った設計と言って良いでしょう。
上記を踏まえて木材のニュアンスを説明します。
ウェンジ・ネックにエボニー指板のフレットレス、というのはかなり珍しい作例だと思います。ウェンジ・ネックもエボニー指板も、ややトーンを去なす作用の強い素材だからです。暴れるトーンを隠蔽する力の強い組み合わせになります。組み合わされたボディ材はアルダーで、ご存じの通り、非常に音楽的な材です。トップ材はバール・メイプルですが、こちらも「朽ちた系」の材で、硬さや脆さは千差万別で、固有のトーンはありません。本機について言えば、使用されているパテの量から、それほど硬くなく、トップ材としての影響は少なそうな印象です。つまり抑止力強めのアルダー・トーンという感じになろうかと思います。
加えて35インチスケールのフレットレスなので、基調トーンは硬めになります。そこでバランスを取ったのでしょう。ニュアンスを取るのが非常に楽というか、快適なフレットレスに仕上がっています。あまり神経を使わずに楽に演奏できる楽器でありながら、指先のニュアンスはバッチリ出せる音楽的な楽器です。35インチの指板は慣れるとピッチも取りやすいです。(同じ1mm 押さえる位置がずれても、ずれるピッチ量が少ないので)
電装系の特徴等もあり、他のエレキベースと比べると、やや硬いトーンと感じられ、例えばジャズベースで使うようなリアPU 単体を本機で行うと、トレブルを少し抑えめにする必要があります。それにロー・ミッドを少し加えた音も大変魅力的なのですが、mtd のフレットレスはフロントPU 単体の音も大変魅力的です。フロントPU でも十分な音抜けが確保されており、左手のニュアンスと艶感がたまらないトーンになります。これらは、他ではなかなか出にくいトーンです。
個体は小傷は多いものの、年式の割にはまずまずの外観で、各部調整箇所もきちんと機能します。金属パーツの塗装のヤレや PU表面の樹脂の削れはかなり見られますが、機能を損なう程ではありません。
オリジナル・ハード・ケース付属。
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