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伝統のヘリンボーン装飾とスキャロップドブレーシングが生む、華やかさと力強さ。
王道D-28の血統を受け継ぎつつ、音もルックスも昇華された“もう一つの王道”。
【音色レビュー S/N:2907389】
◆ ストローク
全体的にやや低音寄りの響きが豊かで、重心の落ち着いたトーンバランスが特徴的。
低音の厚みがしっかりありつつ、高音域はやや控えめで角が取れた柔らかさを持っています。
しっとりとした質感の中に、ローズウッドらしい深みと包容力を感じる音像です。
弾き始めのアタックがやや丸く、ピークで前に出すというよりは、
全体で“包み込むような広がり”を持った響き方をしています。
◆ 指弾き
指先に忠実に反応しながらも、音がどこか“角を落としたような柔らかさ”を持っていて、
指弾きにおいて非常に弾き心地の良い、穏やかなニュアンスを出せる個体です。
音の粒立ちは安定しており、ひとつひとつの音が溶け合うように響く印象で、
ソロパートでもコードラインでも、“まとまりと深み”を常に保ち続ける丁寧な鳴りが感じられます。
◆ 弾き語り
声と重ねた時、ギターが“前に出過ぎず”しっかり支えてくれる伴奏感が際立ちます。
中音域の密度が高く、ボーカルと重なる部分のレンジが心地よく調和し、
声に厚みを与えながらも主張しすぎない、寄り添い型のトーンを演出。
派手さではなく、“信頼できる音の床”としての役割を担ってくれるような安定感があり、
弾き語りスタイルで長く愛される理由がしっかりと感じ取れる個体です。
◆ 総評
「目立たずとも、深く響く」という言葉が似合う、滋味深い1本。
華やかさではなく、長年付き合っていく中でじわりと愛着が染み込むタイプの鳴り方で、
時間をかけて「自分の音」に育てていけるポテンシャルを持っています。
【木目レビュー S/N:2907389】
本個体のトップ材には、フレイムグレインが美しく現れたスプルースが使用されており、
光の当たり具合によって揺らめくような動きが生まれる、豊かな表情を見せてくれます。
木目の幅は比較的細かく揃いながらも、トップ右側にかけてほのかに陰影が差し、立体感を感じさせる仕上がり。
天然木ならではの微細な揺らぎが、ただ整っているだけではない、
“呼吸する表板”としての個性と存在感をしっかりと与えています。
加えて、表面右下には自然由来の色ムラがわずかに確認できますが、
これは決して欠点ではなく、素材そのものと向き合った証としての風合いを残したもの。
経年によって美しく馴染み、時間とともに“味”へと昇華していくことが期待される表情です。
バック材には、繊細で均一なストレートグレインが走るローズウッドが選定されており、
センターラインとの整合も美しく、視覚的な安定感と上質感を兼ね備えた仕上がりです。
ほんのりと赤みを帯びた色合いは、柔らかな艶と深みのあるトーンを連想させ、
その音色の豊かさを木目からも語りかけてくるよう。
全体として、華美すぎず、“実直で芯のある音”を約束してくれるようなルックスに仕上がっており、
これぞMartinのドレッドノート、HD-28の美学が体現された一本といえるでしょう。
【HD-28について～王道にして、次元を超えたドレッドノート】
D-28の名を知らぬ者はいない―
アコースティックギターの象徴として語られるそのモデルに、
ヴィンテージの意匠と豊潤な響きを宿したもう一つの王道、それがこのHD-28。
トップの縁を彩るヘリンボーン・インレイ。
軽やかに前へ押し出すスキャロップド・ブレーシング。
そして、芳醇にして重厚なローズウッドの響きが、低音と高音の均整美を成しています。
【ドレッドノートの系譜、その起源】
このモデルが“ドレッドノート”と呼ばれるようになったのは、
当時の欧州で「Dreadnought」と称された巨大戦艦に由来します。
その名に恥じぬ圧倒的なボディと音圧を携えて、1931年製造依頼し、D-28は誕生。
以来、世界中のミュージシャンがこのギターを愛し、ステージと歴史にその名を刻みました。
D-28の日本上陸は、ただの輸入ではなく“文化の衝撃”でした。
そのあまりの高嶺の花ぶりに、多くの若者が“コピーギター”を作り始めたほど。
日本のアコギ文化の母体――それが、D-28なのです。
【2025年、進化するHD-28】
HD-28は、その系譜に「格の違い」をもたらす仕様変更が施されました。
GEトップブレイス：ヴィンテージライクな“うねるようなサスティン”
モディファイド・ロウ・オーヴァルプロファイルネック：手に吸い付くようなグリップ感
コンフォートエッジ指板：長時間の演奏でもストレスを感じさせない設計
モダンベリーブリッジ＋ボーンピン：芯のある中域と、明瞭で粘るサウンド
ナット〜ヘッドの角度設計：音色伝達における“ひと押しの深み”を演出
ヴィンテージスタイルヒール：機能と造形美の共存
さらに、HDの名の通り、ヘリンボーンインレイとスキャロップドブレーシングを装備し、
より立体的で前に出るような音色を実現。
木材ランクも通常のD-28よりグレードが高く、鳴りの“艶”に差が出ます。
【所有することで完成する、ギターという名の証明】
HD-28は“ただのギター”ではありません。
それは音を出す道具ではなく、“持つこと”でその真価を発揮する存在。
「欲しかったあのギター」ではなく、
「ついに迎えた人生のピース」として、所有者のステージを一段階上げてくれるギターです。
他人のギターを弾くだけでは届かない音があります。
自分のものとして抱きしめたとき、はじめて本物のHD-28の声が聴こえてきます。
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